放射線治療における医療安全(品質保証・品質管理)

医療事故と品質保証

これまで多くの医療事故が報告、報道されていますが、医療安全を担保することは簡単なことではなくなってきています。
近年の放射線治療技術、装置の発展により、治療成績は向上し、多くの恩恵をもたらしています。一方で、技術、機器は複雑化、高精度化し、機器に求められる精度も高度化しています。また、治療プロセスも複雑化し、より精密に治療が実行されることが求められています。
放射線治療における医療安全‘(品質保証・品質管理)とは、決められている場所(部位)に、決められた線量を確実に照射(投与)し、予定されている治療効果を実現すること(品質保証)で、また、その状態を継続的に実行すること(品質管理)です。そのために各治療施設では、患者さんの治療前後に品質保証・品質管理が行われています。

放射線治療における品質保証・品質管理の実際

放射線治療の品質保証・品質管理には、①物理的②技術的③臨床的品質保証・品質管理に分けられます。必ずしも明確に分けられない場合もあるようですが、医師、診療放射線技師、看護師、医学物理士、事務スタッフ、メンテナンススタッフなど多くの職種の方々が協力し、管理が行われています。

①物理的品質保証・品質管理

線量や位置精度などの物理量の管理になります。ピンポイント照射で高線量を病巣に集中させる定位放射線治療では、位置精度は、5mm以下の正確さ(状況によっては更に高精度が要求されます)が求められます。患者さんにも動かないでいただく必要があります。患者さんが動かなくても呼吸で、肺、肝臓、胃、腸などは動いてしまいます。これらの状況を計算して、確実に照射するために品質保証を行っていきます。そのためには、患者さんに照射する前にファントム(模擬人体)を用いて、線量の正確さを確認します。これからの品質保証・品質管理が行われなければ、患者さんへの照射は行うことが出来ません。

  • 図1. 数mmの誤差も許されない定位放射線治療計画の一例

  • 図2. ファントム(模擬人体)による照射線量の確認

②. 技術的品質保証・品質管理

照射、治療技術になります。現在の精度の高い放射線治療を実現するためには、優秀な技術者が必要とされます。医師による診察で患者さんの状況を的確に判断し、治療のプロセスをコントロールします。また、治療器を診療放射線技師が操作し、患者さんに確実に適正線量を投与します。更には、看護師により患者さんの不安を取り除き、安心して治療に専念できるように看護します。医学物理士、品質管理士が、機器の状態を確認されています。メンテナンススタッフにより、修理、調整が行われます。事務スタッフも円滑な放射線治療には必要とされます。そして、これらの方々がお互いに協力して、はじめて、放射線治療は可能となります。そのためには、優秀な技術を習得した人材と協調性が必要となります。

  • 図3. 治療中の照射線量のモニタリングの一例

③. 臨床的品質保証・品質管理

病状、治療効果は、個人差があります。臨床の品質保証・品質管理では、医師が中心となって、治療中、後の変化を見極めながら柔軟に治療を進められています。経験、学識、技術など総合的な能力によって実行されます。

まとめ

放射線治療における医療安全は放射線治療装置のみならず、体型やがん種、がんの位置・形状などが様々な患者個々に実施されています。またこの患者個々の放射線治療の品質保証は様々な職種が協力して実施しています。