人にやさしい放射線治療 ~放射線治療とは?~

放射線治療の始まり

 ドイツの物理学者ヴィルエルム・コンラート・レントゲンがX線を発見したのが1895年。その翌年の1896年には、フランスやデンマーク、オーストリア、アメリカ等において、X線を用いた胃がん、鼻咽頭、皮膚疾患、乳がん等への治療が開始され、これらが放射線治療の始まりとされています。かのキュリー夫妻が1898年にフランスでラジウムを発見し、のちにそのラジウムを使って行われた治療はキュリー療法と呼ばれ、その後の放射線治療の発展に大きく寄与しています。

放射線治療とは

 放射線治療は、放射線を照射することによって、正常細胞よりがん細胞のほうが放射線によるDNA損傷を受けやすく、細胞の修復に時間がかかりやすい、という特性を活かして行われているがん治療で、「外科治療」、「化学療法」とならび、がんの三大治療の一つとされています。

放射線治療には、治癒を目的とした根治的な放射線治療、患者さんの症状を緩和してQOL(Quality Of Life:生活の質)の回復・維持・向上を目的とした緩和的放射線治療、手術や化学療法と併用して行われる補助的放射線治療があり、さまざまながん医療において放射線治療が用いられております。

放射線治療に用いられる装置 “リニアック”

 リニアックとは、リニアアクセラレーター(直線加速器)を用いて電気的に高エネルギーの放射線を発生する装置の通称です(参考1)。この科学技術をがん医療のために応用したものが「医療用直線加速器(医療用リニアック)」であり、現在、わが国において放射線治療で使われている装置は1,100台を超えております。目に見えない放射線を適正に照射するため、高度な制御技術や計測技術を採用しており、ミリメートル以下での精度での制御を行っています。また、安全性確保のため、インターロックと呼ばれる誤動作防止機能をあらゆるパーツに標準搭載しております。

まとめ

 放射線治療は手術と同様にがんの局所的治療に用いられます。もちろん、がん治療はさまざまな治療選択肢を適宜組み合わせて行う集学的治療ですので、すべてのがんを放射線で治療できるというわけではありませんが、放射線治療は比較的体を傷つけることの少ない(侵襲性が低い)治療であるため、身体の形態や機能温存に優れており、働きながら通院で治療を受けられるケースも多々あります。がん治療の中の一つの選択肢としての放射線治療をより多くの皆様にご理解いただけましたら、幸いです。

  • (参考1)リニアック装置イラスト