人にやさしい放射線治療 ~前立腺がんにおける副作用低減~

前立腺がんの放射線治療における副作用

直腸は前立腺に隣接している臓器の1つです。通常、放射線治療を行う場合、直腸の一部が高い線量領域内に入り、健常臓器へも高線量を投与されてしまうことになります。特に直腸粘膜は、細胞周期が短いという特徴から、放射線に対する感受性が高く、損傷を受け易い組織です。高い線量の放射線を受けることにより、排便回数の増加、下痢、直腸出血などの副作用が問題となる場合があります。特に晩期(放射線治療後3ヶ月以降)に起こる直腸出血などは治療が難しく、症状が長引く場合もあります。このような副作用を低減するための方法は大きく分けて2つあります。1つは強度変調放射線治療(IMRT)を用いて、直腸の線量を大きく低減する方法です。もう1つは前立腺と直腸の間に生体親和性のあるスペーサーを入れて、物理的に前立腺と直腸の間に距離を作る方法です。

ハイドロゲルスペーサー

ハイドロゲルスペーサーは放射線による直腸への障害を減らすことを目的とした製品です。前立腺と直腸の間に留置され、直腸を前立腺から物理的に離す役割を果たします。ハイドロゲルスペーサーを留置することにより、直腸が高い線量の放射線の範囲から離れます。そのため直腸が受ける放射線の線量が減り、副作用を低減することが期待できます。
ハイドロゲルスペーサーは化粧品、医薬品、医療機器に幅広く使用されているポリエチレングリコールと水でできています。留置後は約3ヶ月間、体内でスペースを維持します。その後、半年から1年で自然に吸収され、体外に排出されるため体内に残ることはありません。